SF小説『エンダーのゲーム』は起業家全員が読むべき必読書だった

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SF小説のジャンルでは、必ずと言っていいほどオススメされている『エンダーのゲーム』を読みました。アメリカでは、学校の課題図書に指定され、授業でも扱う小説。驚くべきことは、1985年に発表されたにも関わらず、全く内容に色褪せることがないということです。まさに、SF小説界の金字塔なのです。ヒューゴー賞、ネピュラ賞を同時受賞し、その続編もまた両賞を再び受賞。新世紀エヴァンゲリオンの舞台設定に非常に大きな影響を与えた小説としても知られています。

そこらのビジネス本の類いを読むくらいなら、エンダーのゲームなど古典的SF小説を読む方が間違いなくビジネスのヒントや戦略的思考を学べると思います。リーダーシップは大切だと言われても、言葉だけで理解することと人間的なストーリーの中で概念から理解することは天と地の差があるように、ストーリーから概念を学ぶべきです。

読んでみて、エンダーのゲームは起業家全員が読むべきバイブルと言っていいほど、絶望的な困難に直面した時の対処法と心持ち、チーム連携の大切さ、常に最高のパフォーマンスを引き出すチームマネージメントなど、大きなヒントがたくさん詰まっているように感じました。実際に、アメリカ海兵隊では推薦図書に指定され、リーダーシップ論の教科書として使われるほどに、チームマネジメントのノウハウが詰め込まれています。

もはやSF小説というカテゴリを超えた『人間の真理』が詰め込まれている芸術的作品。本書は様々な見方があると思いますが、今回は『起業家がこの本から何を学べるか』に絞って、紹介していこうと思います。

 

[あらすじ]

地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。容赦なく人々を殺戮し、地球人の呼びかけにまったく答えようとしない昆虫型異星人バガー。その第三次攻撃に備え、優秀な艦隊指揮官を育成すべく、バトル・スクールは設立された。そこで、コンピュータ・ゲームから無重力訓練エリアでの模擬戦闘まで、あらゆる訓練で最高の成績をおさめた天才少年エンダーの成長を描いた-(BOOKデータベースより引用)

 

[内容]

1. 怒りをコントロールし、自分のものとする

本書では、主人公エンダーを人類の総司令官とすべく、絶望的と言っていいほどに集団から孤立させたり、フェアではないルールでゲームをプレイすることを強要され、指揮官として能力を育成、試され続けます。バトルスクールのゲームの中で強烈なヤジがあった時にエンダーがチームメンバーに言った一言。

やつらの言葉を覚えるんだ。いつか君たちの敵を怒り狂わせたいと思ったら、その言葉をそいつらに怒鳴ってやれ。それを聞いて、彼らはカッとなってドジを踏むだろう。でも僕たちは、そんなことで頭にきたりはしない。

この文章だけ見ると冷酷なセリフだと思いますが、ここから学べることはたくさんあります。それは、『怒りを怒りのままで返してはいけない』ということです。起業をすると、山と谷が激しく訪れたり、重要なプロジェクトが頓挫したり、金銭的な不安だったり、感情をとにかく激しく揺さぶられることがたくさんあります。しかし物事に関して反応し、感情を揺らし続けることはとにかく精神を摩耗させます。私の『2017年のやるべきこと』にも書きましたが、起業やプロダクト開発は短期戦ではなく、長期で戦うものです。日によってパフォーマンスに差をつけず、やるべきことを毎日淡々と行う以上に効率的なものはありません。

怒りを向けられた、もしくは怒りが自分の中から湧き出ていることに気づいたのなら、エンダーのように、自分の中のフィルターを通し、怒りを咀嚼し、不必要なら反応しないことが大切なのです。世の中の大部分を占めるノイズには、一切反応しないことが大事だと思います。

 

2. 厳しさと寛容さを同居させる

物語が進むにつれ、エンダーはチームのリーダーとなっていきます。そして、エンダーは様々な訓練をチームに施し、弱小だったチームを連戦連勝の部隊に育て上げました。そこで、特にエンダーが意識していたことは、『厳しさと寛容さを同居させること』です。

寛大さは小隊リーダーから来て、厳しさは指揮官から来ることを少年たちに学ばせるのだ。

エンダーは、部隊の結束を一層高めるために、そしてまだ甘さが残る子どもたちに鬼と言っていいほどの厳しい態度を示します。しかし、エンダーは部隊の中の小隊リーダーたちには、子どもたちにはあえて寛大になるよう、取計らいます。チームとしてのゴールを極限まで設定し引き締めると同時に遊びを持たせ、全体の士気を落とさないように、厳しく、しかし楽しみながら戦っていく。アメリカの海兵隊の推薦図書になっているのも、納得しました。

 

3. 到達点を常に意識する

エンダーが何があろうが、常に意識していたこと。この言葉が繰り返しチームメンバーに伝えられます。

扉に着いたとき、こっちの重力がどうであろうと、いいか ─ 敵のゲートは下だ。

最後の戦いでは、エンダーはあまりの敵の多さに絶望からか、パニックになってしまいます。しかし、エンダーの救ったのは、チームメイトの『敵のゲートは下だよ!』という言葉でした。そして、エンダーは正気を取り戻し、敵艦隊の多さには気を散らさずに、人類の総司令官として成すべきことができたのです。

この文章を見たとき、すごくどきっとしました。プロダクトを大きくしていく過程や、開発をしていく中で、ユーザーよりも自分自身を見すぎて、あやゆる場面で近視眼的になることや手段と目的が入れ替わってしまうときがあります。

ことあるごとにチームが抱えるゴールを反復し、全員で進むべき道の認識付けを行うことは、重要な局面を乗り切る時の道標になります。ここがビジョナリーカンパニーに見られる長期的に繁栄していく企業のポイントなのではないでしょうか。


最後に

エンダーシリーズは「エンダーのゲーム」だけではなく、エンダーのゲームの3000年後の世界を描いた「死者の代弁者」やエンダーの優秀なチームメイトであったビーン視点で物語を描いた「エンダーズ・シャドウ」など、シリーズを通して、圧倒的なボリュームで読者を楽しませてくれます。私も現在、「死者の代弁者」を読み始めたところなので、シリーズを通して、記事を書いていこうと思っています。

冒頭でも書きましたが、人間は『物語』からでしか学べないと思っています。小説や漫画を読むことはただの娯楽、時間の無駄とも言う人たちもいますが、長い間人々の間で読まれ続けてきた歴史的名著はやはりその理由があり、人間の真理に迫る圧倒的な説得力があります。

 

1990年生まれ、山梨県出身。サンフランシスコ州立大学国際政治経済学部卒。サンフランシスコでは、デザイン会社にて、インターンを経験したことから、テクノロジーと起業に興味を持つ。その後、日本に帰国しIT系商社に入社。サンフランシスコやイスラエルテック系スタートアップの日本市場へのローカライズ業務に従事。1年3ヶ月の勤務を経て退職、プログラミングを学び、音声ツアーガイドアプリ「Pokke」を開発・運営。

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